林 良 兼松コミュニケーションズ株式会社
法人営業本部 第二法人事業部長

自らの変化、チームの変化が
会社の変化へ

Photography: Yuji Kanno(spoke inc.)

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林 良

大学卒業後、兼松コミュニケーションズに入社した林。当初はグローバルビジネスに憧れ、中国への海外赴任を実現した。その憧れを実現し、林は何を経験したのか。そして次に選んだ道は何だったのか。そんな林の変化のプロセスを訊いてみた。

何もやらないリスクよりも、何かをやるリスクをとる

携帯電話販売を主たるビジネスとする兼松コミュニケーションズ(以下、KCS)で次々と新しい事業に関わる林は、「ビジネスとは厳しく奥深いものであるがその先に楽しさがある」と言う。それは林がKCSに入社して6年後、上海の現地法人に赴任しそこでの経験から感じたことである。
 当時の現地法人は世界に先立ち3Gサービスの成熟期を迎えた日本の事業ノウハウを、万博開催を契機に3Gサービスが本格普及していくと見込まれた上海にて、現地国営通信事業者との契約のもと展開するという事業に取り組んでいた。
 しかし、日本と中国ではモバイル業界の構造や商習慣、消費者の購買行動は全く異なっており、また結果として中国の3Gサービス展開が大きく遅延したこともあり、展開前の目論見は大きく外れ、現地法人は深刻な苦戦を強いられていた。
 そういった厳しい状況の中、赴任した林に求められた役割はビジネスの立て直しである。現場に足を運び分かったことはいまのビジネスモデルでは勝てないということ。赴任して1年、林はどうすれば生き残れるのかということだけを日々考え行動し続けた。しかし形勢を好転させる成果にはつながらず、合理的に考えれば中国市場から撤退するという選択肢しかなかった。

たった1年しか挑戦していないのにこのままでは引き下がれないというのが林の本意であった。それに対しKCSの経営陣は条件付きで現地法人運営を継続するという選択に至った。林は言う「経営陣の人間性や懐の深さとともに、KCSには挑戦する人間の意思を尊重する組織風土があったからではないか」と。
 とはいえ、先が見えない状況に変わりはない。そんなときに親会社の兼松の方からかけられた言葉が今も林の中に強く印象に残っているという。
 「事業や会社が歯車だとする。左に回転してしまっている歯車を一度止めて、右に回すのは本当に大変で、誰にでも出来ることではない。これは経験してみた者でないとその苦しさはわからない。一方そうした状況を自分にとってピンチとみるかチャンスとみるかは本人次第。やれるだけ挑戦してみろ」
 その後、現地法人のビジネスモデルを店舗型の販売ビジネスから無店舗型のソリューションビジネスへと転換し黒字経営へとつなげることができた。
 何もやらないリスクよりも何かをやるリスクをとる。本気で何かをやり続けることが市場から期待される価値に変わり、厳しさの先に楽しさがあることを実感した経験だった。

世界を変える、仲間とともに

7年の中国赴任を経て東京本社に帰任した林がいま手掛けていることはアライアンスビジネス。KCSの既存ビジネスの枠組みにとらわれない次なるビジネスの芽をつくり、果実化することがミッション。
 このビジネスの醍醐味は規模を問わず多様な経営者やリーダーと出会えること。事業シナジーを前提とした投資を通じアライアンスパートナーとしてビジネスを成果につなげていくというアプローチもとる。その取り組みを社内外のチームで推進できることは何よりも刺激的だ。
 自らの力で世界を変えたいと考え、高い熱量を持つ若くて優秀な人材と対話できることは、自らの刺激にもなり新しい視点を獲得できる。そういった仲間とともに新しいことに挑戦できることは変化に富み、その変化は林自身の成長であり、会社の成長にも繋がっていると考えている。

自走する組織を目指して

いま注力しているのはチームとしての成長。「チームとは器であり、その状態は常に変化している。チームを構成する一人ひとりの個性は多様かつ繊細で、その状態次第でチームの雰囲気が変わっていく。だからこそ個々人を断定的に捉えるのでなく、いまの状態を細やかに把握することが大事だと思う」と林は語った。
 そういったチームを牽引する立場として林が心掛けていることは、2つあるという。
 ひとつはなるべく自然体でいること。そのままの自分であることが、何よりもメンバーに自分というものを理解してもらいやすいと林は考えている。ただそれは自分の価値観を押し付けることではなく、相手の価値観を受け入れながら素直に向き合うことだという。
 もうひとつは成長の場をあたえること。メンバーが自ら前面に立ち、失敗も成功も実体験を通すことで何よりの学びにつながると林は考えている。誰かに言われて動くのでなく自ら考え自ら動く人材を育てチーム全体として自走する組織を目指して、林はいまも奮闘している。

 最後に林にとってリーダーとは何かと聞いてみた。
「この人がいると元気がでる、安心するといった、メンバーの活力が湧く存在でありたい」と林は答えた。

林 良

兼松コミュニケーションズ株式会社 法人営業本部 第二法人事業部長
1977年愛知県生まれ。大学卒業後、兼松コミュニケーションズへ入社。2007年より兼松通訊商貿(上海)有限公司出向し、現在董事長を務める。また、兼松コミュニケーションズにて第二法人事業部 アライアンスビジネス部長と新事業開発室 副室長を兼務、兼松グランクスにて代表取締役社長を務める。